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KCPC設立式開催報告 #2

去る2022年2月18日(金)、知識創造プリンシプルコンソーシアム(以下、KCPC)の設立式を開催した。約60名の日本を代表する経営者の方々に、オンラインの「対話の場」にお集まりいただいた。


KCPCのアドバイザリーボードには、野中郁次郎一橋大学名誉教授をはじめ、グローバルな知識学派の方々、11名が顔をそろえる。


設立式では、まず、日本のアドバイザーである荻野弘之先生(上智大学哲学科教授)と、露木恵美子先生(中央大学ビジネススクール研究科長、教授)にご講演いただいたあと、経営者の皆さんとの意見交換と対話の場を設けた。


今回は荻野先生のご講演内容を紹介したい。


【2】荻野弘之先生(上智大学哲学科教授)ご講演

「いま経営者に求められる徳目とは何か:賢慮とリーダーシップ」

経営を、未来創造型に変えていくにはどうしたらいいか。

KCPCは、「機械論の経営」から「人間中心の経営」への転換が必要であり、人間中心の経営は6つの要素(6P)によって成り立つと考える。


荻野先生は、この6Pの一つである、「Prudence(賢慮)」についてわかりやすく、かつ経営の文脈に沿って解説くださった。


Prudence(賢慮)とはなにか?


これは、アリストテレスがPhronesisというギリシャ語に基づいて展開した言葉で、思慮深さ、知慮といった、Practical wisdom(実践的に賢い)のことである。学問的な大発見や名人芸といったSophia(卓越した技術)とは異なる知識だ。


荻野先生は、「ご自身のロールモデルになるような、すぐれた経営者はどういう知識に支えられているのだろうか?と考えてほしい」と呼びかけた。


賢慮は、技術(医術など)などの「専門知」と異なり、明確に定義できないゆるい知の「総合知」であり、そうした総合知を備えた人がすなわち「賢い人(Phronimosu)」なのである。


賢慮の特質を一言で表すと、「非合理的な要素(夢や理想)なども含んだ、柔らかい合理性」だという。その対極にある愚かな合理性の例として、ビュリダンの驢馬の寓話が示された。

賢慮はまた常識の基盤をつくるものであり、身につけるためには経験を積むことが必要となる。思案や熟慮の過程を含むため、単なる「勘のよさ」や「直感」とも異なる。その代わり、忘却や衰退はない。


賢慮の持ち主は、情愛深く思いやりがあり、普遍的な原則の中に個別性を配慮できる人だ。原則の機械的な運用を適用する「官僚主義」とは異なる。


アリストテレスは、「賢さは人柄の徳と結びつかなければならない」と構想する。賢さは、才覚(設定された目標へ向かうための、目標達成能力)を基盤にするため、悪い目的と結びつくと「悪知恵」に転化する危険性もはらむ。通常は、法規や罰則で防ごうとするが、そこには限界がある。アリストテレスは、「本当の意味で賢い人は善い人」であり、「徳との結びつきにより、目標設定の正しさを担保できる」と考えていた。


最後に、荻野先生は「現在は、健全な常識が通用しなくなっている世界。その『健全な常識』がうまく活用できるように、汚れを取り除いていくことが大事ではないか?」と問いかけ、プリンシプルを変えるための6つの提案をくださった。



プリンシプルを変えるごく平凡で、ささやかな提案


  1. 適度な緩さの尊重:善いこともやりすぎない。80 点で満足し、100 点を目指さない。

  2. 本当に大事な目的は何かを考えて、枝葉末節は放棄する。

  3. 「前例がない」を理由にせず、やれそうなことはやってみる。

  4. 大きな物語を語るのもよいが、日々の小さな工夫を積み重ねる。

  5. 上司は責任を取る度量(徳)を示して部下を活かす。信頼の醸成。

  6. 属性(年齢・性別・出身)ではなく、徳の相補性によるチームの多様性(diversity)。


資料:

レジュメ_上智大学荻野先生
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